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富山で釣りと伝統工芸にチャレンジ!お腹も心も満たされる「農泊」の旅(後編)

「野菜の収穫や魚釣りをして食べたい」「郷土料理を作りたい」「伝統工芸を体験したい」「田舎が欲しい」。

 

“いつかチャレンジしたい特別なこと”として語られる、こうした非日常体験は、実は誰かの「日常」。

そんな日常のお裾分け、つまり体験をさせてもらえる旅こそが、最近話題の「農泊」です。

 

「農」という言葉から農村が連想されがちですが、対象は「農山漁村」。つまり日本の産業現場すべてが舞台となるのです。

 

今回はその中から「漁」と「工」にスポットを当て、1泊2日で富山県の氷見・高岡にお邪魔してきました。

前編では氷見の「釣って食べる体験」が中心でしたが、後編では高岡の「伝統工芸を見て作る体験」についてお届けします。地域の方に教えてもらった、とっておきのグルメ・絶景情報も満載です。

 

※前編はこちら

 

<2日目の午前も氷見の美味しい食材を満喫>

■民宿/あお

釣った魚とご主人のトークを、お腹と心一杯に満喫させていただいた翌日。

民宿「あお」は朝食も豪華です。地の魚と野菜をふんだんに使った手料理がたくさん並んで、思わず笑顔に。

しかも昨日の夕飯で残った甘鯛の頭が、汁物になって再登場。こんな心遣いが、本当に染みます。

宿を出るときも、ご主人とお母さんが揃ってお見送りしてくれました。「気を付けるんだよ。」「また遊びにおいでね。」と、まるで親戚のよう。

「また来るね!ばいばーい。」こんな風に手を振って出発できる宿なんて、なかなか無いと思います。

 

民宿あお

〒935-0002 富山県氷見市阿尾491

TEL 0766-74-3300

チェックイン  16:00 (最終チェックイン:21:00)

チェックアウト09:30

URL https://goodlucktoyama.com/ao/

 

■食事と買い物/ひみ番屋街

今日は氷見市の隣、高岡市に移動するのですが、その前に氷見の人気スポットへ立ち寄ります。

それが「氷見漁港場外市場 ひみ番屋街(ひみばんやがい)」。

獲れたての海産物を中心に、地元の食材をその場で食べたり購入したりできると、多くの観光客が立ち寄るそう。

 

訪れたときは「寒ブリ」や「ズワイガニ」が旬で、あちこちに美味しそうな姿が並んでいました。

こちらには、食べ歩きしやすいご当地グルメもたくさん。

豪華な朝食をいただいたばかりなのに、ついつい氷見牛の入ったカレーコロッケ(イエローコロッケ)に手が伸びてしまいます。

お肉とじゃがいもの甘み、ちょうど良いスパイシーさに病み付き。

さらに、毎日手作りされているというお餅も購入。素朴な見た目なのですが大人気の商品で、毎日昼頃には売り切れてしまうそう。

もっちもちの皮に、甘過ぎない粒あんがたっぷり入っていて、確かに繰り返し食べたくなる一品でした。

お腹が膨れたところで、誰でも無料で入れる足湯スペースへ。

氷見には温泉も湧いていて、宿泊・日帰りで楽しめる施設もたくさんあるそうです。

 

氷見漁港場外市場 ひみ番屋街

〒935-0004 富山県氷見市北大町25−5

TEL 0766-72-3400

営業時間 物販施設  8:30~18:00
鮮魚施設  8:30~18:00(鮮魚は売り切れ次第終了)
フードコート 8:30~19:00
飲食施設 11:00~19:00

定休日 1月1日

URL http://himi-banya.jp/

 

<いざ、職人の町「高岡」へ>

いよいよ今日の舞台である高岡市へ向かいます。

途中に、かわいらしい電車や、海岸線を楽しめる絶景スポットがいくつもあるので、寄り道しながら行くのがおすすめ。

 

高岡市内に入ると、一転して「町並み」が主役の景観になります。

 

■高岡駅/お得なクーポン/高岡市観光協会

高岡を賢く楽しみたいなら、ぜひ活用してほしいのが「美味しい!楽しい!和菓子&体験クーポン『高岡雅美(たかおかみやび)』」。

こちらは2,000円で、5つの体験メニューから1つ、5つの和菓子屋から2店を選び、体験とスイーツを味わえるお得なクーポンです。

(電車・バスのフリー切符を付けても2,500円。)

 

どの体験もスイーツも魅力的で、何にするか選べない…ということで、食べてばかりですが先にランチをいただくことにしました。

 

高岡駅観光案内所

〒933-0021 富山県高岡市下関町6−1 高岡駅 2F

TEL 0766-23-6645

営業時間 9:00〜19:00

定休日 なし

URL https://www.takaoka.or.jp/

 

<雰囲気も食事も最高な古民家和食でランチを堪能>

■和食屋/茶寮 和香

訪れたのは、古民家を改装した和食屋「茶寮 和香(にこか)」。

空間はもちろん、食材や食器1つ1つにもこだわりの詰まった素敵なお店です。

お昼は2つのコースからオーダー。

「ゆずと生姜で香り付けした、蟹しんじょ」「氷見の鰆の焼きもの」「菜の花と金時人参の白和え」「柿のなます」…等々。

高岡や氷見をはじめ地元の食材をふんだんに使ったメニューは、どれもため息の出る美しさと美味しさでした。

 

カウンターも可愛らしく、次回は夜に訪れて、ゆっくりお酒やご主人との会話を楽しみたいです。

 

茶寮和香

〒933-0945 富山県高岡市金屋本町2−26

TEL 0766-75-8529

営業時間

月〜金・土 ランチ:11:00〜14:00

ディナー:18:00〜22:00

定休日 毎週日曜日・祝日

URL https://www.facebook.com/nicoca25/

 

<歴史ある町並みを散策>

■散策/金屋町

ランチの後は、腹ごなしを兼ねて町を散策。氷見は自然が美しかったですが、高岡は一転して歴史ある町並みが素晴らしいです。

高岡は開町410年。戦渦を免がれたおかげで江戸時代の建物も現存しており、そこかしらに職人の作品(彫像など)が並びます。

 

写真の石畳道路、よく見ると銅製の星の飾りが隠れており、繋げると北斗七星になるんです。

これは400年前に、7人の鋳物師を金屋町に住まわせたことにちなんで、地元のみなさんが市に要望して実現したそう。

常に創意工夫を膨らませて形にする、高岡の職人魂を各所で感じることができました。

 

<錫でつくる世界に1つだけのアクセサリー>

■体験工房/金屋町/大寺幸八郎商店

そんな職人魂を、もっと近くで感じたい。できれば体験してみたい。ということで、クーポンを手に訪れたのが、錫(すず)を使ったアクセサリー作りが体験できる「大寺幸八郎商店(おおてらこうはちろうしょうてん)」です。

 

こちらは慶応3年創業で、江戸時代から継承される建物の一部を店舗として開放しています。

お店に入るとまず、錫でできた小物や雑貨が目に飛び込んできます。箸置きやアクセサリーといった日用品から、干支を祝う飾りなど、現代風にアレンジされたアイテムもたくさん。

そして奥に進んだ部屋の一画に、お目当ての体験コーナーが。

優しく品の良いマダムが、アクセサリー作りを教えてくださいます。

 

こちらで扱う錫の面白いところは、ぐにゅぐにゅと曲がるところ。手に持ってゆっくり力を入れると、ぐにゅーっと好きな角度に折り曲げられます。

さらにハサミで切ったり、布地と一緒に万力にかけることで柄を付けられたり、とにかく自由度が高いです。

 

「ネックレスでもイヤリング・ピアスでも、何でも好きなものを作ってくださいね。帯留めなんかを作る方もいらっしゃいますよ。」とマダム。

お店の作品や、過去に体験したお客さんたちの作品の写真を見せていただきながら、ゆっくりデザインを固めていきます。

そうして作りたいデザインが見えたら、マダムに相談。

「じゃあ、錫に柄をつけるとろから始めましょうね。」と、優しく手ほどきしていただきながら、理想のアクセサリー作りにチャレンジです。

万力を回したり錫を切ったり、初めての体験ばかりで戸惑いながらも、徐々に形が見えていくのが面白い。

 

そうして20分ほどかけて、完成した作品がこちらです。

上手にできる工程もあれば、想像と違うこともあり、しかしそれが味になって逆に良かったり。

既製品にはない“自分だけの作品”を作りあげる喜びを、味わうことができました。

さっそく装着して、特別に奥の縁側で写真を撮らせていただきました。

高岡の長屋は「作業場(大寺幸八郎商店だと現在は店舗)と母屋の間に“庭”を配置」した造りが一般的。

これは万がいち作業場で火災が起きた際に、母屋に燃え移りにくい工夫なのだそうです。

 

大寺幸八郎商店

〒933-0841 富山県高岡市金屋町6−9

TEL 0766-25-1911

営業時間 9:00〜17:00

定休日 毎週木曜日

URL http://www.ootera.com/

 

<職人の町で、お気に入りのショップを見つけよう>

■買い物/金屋町/喜泉

アクセサリー作りの後は、再び町を散策。

そのなかで私が特に心を掴まれたのが「喜泉(きせん)」です。

 

1946年創業。美しい細工の香炉など、まさに伝統工芸といった作品を作ってこられたそうですが、最近は現代のライフスタイルに調和するスタイリッシュな食器なども数多く作られています。

写真のワイングラスは底に“くぼみ”があり、セットの金属ベースを軸に回転させることができます。手を離した際には斜めに留り、とても素敵。

編み目が特徴的な一輪挿しは、3Dプリンターを使って制作したそうです。

 

伝統の技と、これまでの常識にとらわれない自由な発想とデザイン力。

代替わりや外からの流入が進む高岡は、これからさらに魅力的になりそうです。

 

四津川製作所  喜泉堂・KISEN ショールーム

〒933-0841 富山県高岡市金屋町7-15

TEL 0766-30-8108

営業時間 平日9:00~17:00
定休日 土日祝、年末年始、お盆期間

URL http://www.kisen.jp.net/

 

<老舗和菓子屋で美味しいスイーツ>

■和菓子/山町筋/大野屋

体験や町歩きを楽しみ、小腹が空いたらクーポンを利用してスイーツ巡りへ。

5つの和菓子屋から2店選べるのですが、今回は180年以上も続く老舗「大野屋」に伺いました。

 

ユネスコ無形文化遺産にも登録された「高岡御車山祭」の山車の車輪をモチーフに作られたという、山町筋(きんつば)をいただきます。

うっすら透ける生地の中に、黒白2色の粒餡が浮かび上がる美しい造型。上品な甘みが優しく広がって、幸せな気持ちにしてくれました。

 

クーポンは使い切れなかったら、有効期間内であれば別日でも利用可能です。また来る日を楽しみに、もう1つのスイーツは取っておくことにしました。(詳細は高岡市観光協会のHPへ)

 

大野屋 高岡木舟町本店

〒933-0929 富山県高岡市木舟町12

TEL 0766-25-0215

営業時間 8:15~19:30(日祝 8:15~19:00)

定休日 毎週水曜日(祭日を除く)

URL http://ohno-ya.jp/

 

<年間12万人が訪れる、伝統工芸の工場見学ツアー>

■工場見学/オフィスパーク/能作

そして最後に訪れたのが、高岡の伝統工芸を語る上で外せない「能作(のうさく)」です。

1916年創業。もとは仏具などを製造していましたが、現在は純度100%の錫を使った「曲がるKAGO」や「酒器」「タンブラー」など、デザイン性の高いテーブルウェアやインテリア雑貨が大人気。

東京をはじめ、全国のセレクトショップなどで取り扱われています。

能作は作品も素晴らしいのですが、もう一つの魅力が、今回訪れた本社の「工場見学ツアー」。

職人の技を近くで見たり、高岡銅器や能作について詳しく教えていただけたりします。

こちらは無料で参加できるのですが、新高岡駅から車で15分、周囲に何もない立地にも関わらず、なんと年間12万人もが訪れるそうです。

 

工場見学になぜそんなに人が?と疑問でしたが、実際に訪れて納得。

本社は入り口からギャラリー、工場まで、どこも遊び心とデザインに溢れています。

建物に入ってまず驚くのが、壁一面を覆う不思議な飾りの数々。何のオブジェかと思ったら、こちらはすべて現役の“型”だそう。

溶かした錫を成形するのに使われるのですが、工場の片隅に収納するなら飾ってみたらどうかと並べてみたところ、まるで印象的なアートのように。

 

時々、職人さんが来ては使い終わった型を戻したり、新しい型を持っていったり。その時によってアートが変化して行く様子が、また魅力的です。

その足元には、真鍮でつくられた巨大な日本地図。こちらも思わず写真を撮りたくなる素敵な作品でした。

さらに工場スペースへ案内していただくと、廊下に飾られた部屋の看板も、またオシャレです。

 

工場内ではたくさんの職人さんが、各々の作業に集中されていました。

溶かしたり、削ったり、溶接したり。思ったより若手の職人さんが多くて驚きましたが、みなさん、技術はさすがの一言。

繊細な作業を目にも止まらぬスピードで、どんどんこなしていきます。

特別に至近距離で見させていただいても、「え、え、どうなったんですか?もう1回!」と、まるで手品のよう。

 

機械化が進む現代でこれだけの技術を多くの若者たちに伝承している能作は、作品はもちろん、その後ろにある見えない努力が素晴らしく、それを生で感じられるから工場見学がこんなに人気なんだと理解しました。

 

ちなみに本社には、能作の器で地元食材をいただけるカフェや、器などを作れる体験工房、ギャラリーを兼ねたショップなども併設されています。

訪れる際は、しっかり時間を確保していくのがおすすめです。

 

能作

〒939-1119 富山県高岡市オフィスパーク8−1

TEL 0766-63-0001

営業時間 10:00〜18:00

定休日 年末年始

URL https://www.nousaku.co.jp/

 

<富山での農泊を振り返って>

こうして、1泊2日とは思えない盛りだくさんな旅が終了。

1日目は自然に溢れた「釣って食べる体験」。2日目は歴史を感じる「伝統工芸を見て作る体験」を満喫し、全力で農泊を味わいました。

今回の旅を通して感じたのは、農泊は「消費する」のではなく「積み重ねる」旅だということ。

支払った金額に対して決まりきった商品を受け取るのではなく、誰かの日常にお邪魔させていただいて“時間”や“目標”を共有し、共に何かを産み出すのです。

 

農泊に出掛けるときは “お客さん”にならず、感謝とリスペクトの気持ちを持って、プレイヤーとして地域に入り込んでみてください。

その地域の一員になった気持ちで色々なことにチャレンジし、地元の方と話してみたら、思いがけない素敵な何かに、きっと出会うことができると思います。

 

お世話になったみなさん、本当にありがとうございました!また「ただいま」と言ってお邪魔します。

 

富山県氷見市・高岡市の「農泊」について詳しく知りたい方は

「氷見市宿泊体験推進協議会」

氷見市宿泊体験推進協議会

「高岡市観光協会」

https://www.takaoka.or.jp/