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里山、里海の恵みと心温まるふれあい。いすみ市「農泊」の旅

思い出に残る体験型の旅の1つのスタイルとして、「農泊」が最近人気を集めています。農泊は文字通り、全国各地の農山漁村に滞在し、日本ならではの伝統的な生活体験や地元の人々との交流、地のものをふんだんに使った料理などを楽しむ旅行のこと。

農泊ができる地域は全国にありますが、今回訪れたのは、千葉県の南東部、「チーバくん」の背中の腰部分にあたる、いすみ市。温暖な気候に豊かな里山、里海が広がり、農業、漁業ともに多彩な特産品がある町です。また、写真映えする名所も数多く所在。

そんな魅力あふれる地域で農泊を体験したのは、「農村カメラガールズ」の3人です。8000人以上が登録する、日本最大のカメラ好き女子のコミュニティ「カメラガールズ」内で発足したサークルで、日本各地の農村の魅力を発信すべく、さまざまな活動を行っています。

今回の旅は1泊2日。農村に泊まるだけではなく、いすみ市の観光も楽しみながら旅を満喫します。

 

千葉県・いすみ市/海辺の名所と郷土料理の手作り体験

「いすみ市はローカル線のいすみ鉄道が写真好きの間では有名で、撮ってみたいよねって電車の中で話していました」と農村カメラガールズの3人の江本彩華さん(左)、角田静花さん(右)、森部博子さん(中央)は言います。江本さんは農業体験自体が初めて、角田さんは他の地域で農泊を経験、森部さんはアメリカ留学で農業の勉強をした経験があるそうで、三者三様ながら、農泊への興味の高さは共通しています。

3人が降り立ったのは、JR外房線の大原駅。東京から特急電車で約70分とアクセスも便利です。最初の目的地は、東に太平洋を望む崖の上に立つ太東埼灯台。

水平線を一望することができ、まさに絶景。週末は地元のNPO法人によるカフェや特産品販売も開催しています。

 

太東埼灯台

住所/千葉県いすみ市岬町和泉字3508

灯台のある丘を下り、次はいすみ市の隣、一宮町にある九十九里浜の南端、釣ヶ崎海岸へと向かいます。サーフィンのメッカとしても知られ、国際的な大会も開催されている海岸です。2020年東京オリンピックのサーフィンの競技会場に決定され、選手村の建設も進んでいます。

砂浜には巨大な鳥居があり、毎年9月、上総十二社祭りが行われ、ここから神輿を担いだ2500人の裸若衆たちが海へと向かう姿は圧巻。

 

釣ヶ崎海岸

住所/千葉県長生郡一宮町東浪見

 

名所を楽しんだ後は、そろそろお昼ご飯の時間。目当てのランチスポットは、いすみ市の自然豊かな森の中にある、「ブラウンズフィールド」の「ライステラスカフェ」です。「ブラウンズフィールド」は、もともとは写真家のエバレット・ブラウンさんと料理研究家の中島デコさんの住まい。現在は、2人の自然とつながった暮らしに共感する人たちが集まり、一緒に暮らしながら働いたり、旅行客はコテージで宿泊できたり、農業体験もできたりなど、多彩な顔を持つ場所になっています。

その中の「ライステラスカフェ」は金曜から日曜に営業。「ここの土と太陽、風、水の恵みを受けて育った野菜を主に使い、自分たちの手でゆっくりと発酵させている味噌や醤油などの調味料で味付けした料理を提供しています。動物性の食材は一切使いません。他ではなかなか食べられない味ですよ」と、店長の小林順子さんは言います。

この日頼んだのは「今週のランチプレート」(税込1320円)。ごはんはカフェの目の前にある田んぼで「ブラウンズフィールド」のスタッフさんが栽培したお米を、かまどで薪で炊いた逸品。味噌汁は大豆から栽培して仕込んだ味噌が味の決め手です。自家製デミグラスソースを添えた里芋とタカキビのコロッケや、サツマイモと青菜を塩麹に漬けた豆腐で合えた一品など、滋味豊かで優しい味わいの料理の数々に、「おいしい……」と、しみじみ感動する3人。

森に囲まれたブラウンズフィールドには、ツリーハウスやインディアンのテントのティピー、築およそ260年の古民家を改装した「サグラダコミンカ」などがあり、見学も自由。飼育されているヤギと触れ合うこともできます。

 

ライステラスカフェ

住所/千葉県いすみ市岬町桑田1501-1

電話/0470-87-4501

営業/金曜・土曜・日曜・祝日11:00~17:00(16:30LO) ※祝日は不定休のため電話を

ホームページ/https://brownsfield-jp.com/rice-terrace-cafe/

 

おなかも満たされたところで、宿泊先の「植ちゃんの宿」へ。元小学校の教諭で、兼業で農家も続けてきた植村和子さんが営む宿です。到着したとたん、玄関に出てきた植村さんは開口一番、「お帰りーー!」と朗らかなあいさつ。思わず3人も「ただいまー!」と笑顔で返します。

植村さんの自宅裏には20種以上の野菜や果物を作る約1000平方メートルの畑があり、その後ろには竹林などが広がる山林も。四季を通じ、タケノコ掘りや、多彩な野菜や果物の種まきと収穫、梅や栗などの収穫、干し芋や干し柿づくりなど、さまざまな農業体験をすることができます。

到着して早々、リビングにはご近所さんの丸妙子さんが待機していました。「丸さんはね、地元に伝わる郷土料理『祭り寿し』のスペシャリストなの。このへんのお嫁さんは全員作れるから。今日はまずこれをみんなに作ってもらいます」と、植村さんは言います。

まずは巻き簾の上に海苔を広げ、紫芋で色を付けたご飯を巻いて、5本の細巻を作ります。その細巻で、今度は焼いた卵を芯にしてさらに巻くと、「これが花びらになるんですよ」と、丸さん。

ここから工程はどんどん複雑に。海苔に対して山折りと谷折りを加えたり、さらにキュウリや紅ショウガも具材に登場。最後にひと際大きな卵焼きで全体を巻いて、筒状に形を整えます。

カットして断面を見ると、見事な椿の花が咲きました!

つぼみや葉までが繊細に表現されています。

「すごい!!感動―!」(江本さん)、「これは絶対写真に撮りたいですね」(角田さん)、「自分のお家でもホームパーティーで作ったら喜ばれそう!」(森部さん)と大絶賛。カメラガールズの3人と植村さん、丸さんみんなでハイタッチをする盛り上がりようです。

続いて同じリビングで、植村さんの畑でとれたサツマイモのあんを使ったどらやき作りを体験。お菓子作りをしながら、ガールズトークにも花が咲きました。

体験を終えた後の夕食は、豪華な海鮮が目白押し。まずは、いすみの名産物のアワビのお刺身。酒蒸しした身は抜群に柔らかく、旨みもたっぷり。さらにアワビに似た貝のトコブシの煮付けや、トコブシのゆず味噌漬け、近所で栽培されているレンコンのブルーチーズ焼き、里芋の茎のずいきの煮しめ、畑の野菜たっぷりの鍋など、植村さんの心尽くしの料理がテーブルの上に満載で、食べきれないほどです。

おなかを満たした後は、カメラガールズならではの活動へお出かけ。実はいすみ市は星空がきれいな町としても有名です。SNSなどではいすみ市の星空の写真が多くアップされていて、特に絶景スポットとして知られているのが、ローカル線のいすみ鉄道の上総中川駅と国吉駅間にある第二五之町踏切。

現地に向かうと遮断機などがない、踏切警標のXマークの目印だけが立つ踏切があり、周囲は田んぼばかりで真っ暗。頭上には空が広がり、時折通過するいすみ鉄道の電車の明かりがどこかノスタルジックな気分に誘います。三脚などを駆使しながら、カメラガールズは星空を撮影。

さらにシャッターを長時間開いたままにしながら撮影し、スマートフォンの明かりで文字を描く、なんて遊びも楽しみました。

宿に戻り、撮影した「ISUMI」や宿の植村和子さんの名前をアレンジした「KAZKO」を見せると、「どうやったのこれ⁉ すごいじゃん‼」と、植村さんも大喜び。楽しい会話が夜更けまで続きました。

 

千葉県・いすみ市/港の朝市グルメと人気のローカル線へ

翌朝、朝食をたっぷりといただいた後は、果物や野菜を収穫する農業体験へ。まずはゆずやキウイフルーツを、木から高枝切りばさみで収穫。

今度は畑に向かい、水菜にサニーレタス、カブ、長ネギなどを引き抜きます。「もちろん持ち帰ってね」と、植村さん。持ちきれないほどの野菜と果物をいただきました。

農作業を終えた後、近所の田んぼに飛来している、70羽ほどのコハクチョウの群れを見に行きました。滑空してきたり、水田でたたずんだりしているコハクチョウを、3人は何枚も写真に収めていました。

次の予定のために、「植えちゃんの宿」はここでチェックアウト。「本当にありがとう! 幸せな時間だった。私も相乗効果で元気をもらいました。次来る時までに、私はみんなにガイドできるよう、星空のソムリエの資格を取っておくね」と植村さん。少し寂しげな笑顔で見送りしてくれました。

 

植ちゃんの宿

住所/千葉県いすみ市下布施1294

電話/ 0470-66-0537

料金/1泊2食付 ・中学生以上7,500円(税込)、農業体験1,000円(税込)

ホームページ/http://www.uechan.net/

 

植村さんとお別れし、3人は海沿いの大原漁港に向かい、少し早めの昼食をいただきます。目当ては「港の朝市」。毎週日曜日に開催され、水産会社や漁協、地元の飲食店などの出店が約40店並び、いつも大盛況 。

中でも名物は海鮮バーベキュー。材料をその場で購入し、青空の下で楽しむことができます。特産のイセエビの海老汁や、地ダコの串焼き、サザエなどの貝焼きを満喫。「活気があって良いですね! こんなご飯スポットが家の近くにあったら毎回来ちゃうかも」(森部さん)。

大原漁港 港の朝市

住所/千葉県いすみ市大原11574 大原漁港荷捌所

営業/日曜8:00~12:00

ホームページ/http://minato-asaichi.com/

食後は散歩がてら、近くの大原海水浴場へ。映画『万引き家族』のロケ地にもなった場所です。今日は寒くて風が強い日ということもあり、人影はまばら。けれどカメラガールズの3人は、砂浜で家族が手をつないでジャンプする、映画のキービジュアルの再現撮影にもチャレンジするなど元気いっぱい。

 

大原海水浴場

住所/千葉県いすみ市大原

 

海辺の名所巡りは続きます。次は太平洋に突き出た岩場に、赤い社が海に浮かび上がるように立つ「岩船地蔵尊」へ。御本尊の木造地蔵像は室町期の作と伝えられ、海上安全、五穀豊穣などの守り本尊として漁業者や近くに住む人たちの信仰を今も集めているそう。

 

岩船地蔵尊

住所/千葉県いすみ市岩船2082

 

そして昨夜撮影した、いすみ鉄道にいよいよ乗車すべく、大原駅へ。レトロな旧国鉄形車両が走り、レストラン列車も運行するなど、斬新なアイデアで有名なローカル線です。カメラを片手に鉄道と里山の風景を撮影する人も多く、特に春は黄色い電車と菜の花、桜の花が美しい写真が収められると大賑わい。

かわいらしい車両に乗り込んだ3人は、思い思いに写真を撮影。売店で買ったおみやげを使い、窓辺で広告写真風のカットを撮るなど、楽しい時間を過ごしました。「デジタルの世界にないアナログ感が良いよね」(江本さん)、「車両が短いので、東京の電車に比べて撮りやすいです」(角田さん)。

 

いすみ鉄道

ホームページ/https://www.isumirail.co.jp/

 

国吉駅で降りた3人はユニークなテーマパーク、「ポッポの丘」へ。こちらの目玉は場内に数多く展示されている本物の鉄道車両。いすみ鉄道の古い車両や、東京の地下鉄の丸ノ内線、国鉄時代のディーゼル機関車などがずらりと並べられていて壮観。

中に入ることもでき、試着できる車掌さんの制服も置かれているので、ちょっとしたコスプレ撮影も楽しめます。

 

ポッポの丘

住所/千葉県いすみ市作田1298

電話/0470-62-6751

営業/金曜・土曜・日曜・月曜・祝日10:00~16:00(悪天候は休業)

料金/無料

ホームページ/http://keiranbokujo.com/company1.html

 

観光名所を周った後は、お楽しみのおやつタイム。いすみ市の大自然の中で約150頭の乳牛を飼育している高秀牧場へ。牧場内のミルク工房では搾りたての牛乳を使ったジェラートやスイーツが楽しめます。テラス席からは牛舎の牛たちも見学可能。予約すれば乳しぼりなどの酪農体験もできます。

 

高秀牧場 ミルク工房

住所/千葉県いすみ市須賀谷1339-1

電話/0470-62-6669

営業/10:00~17:00(16:00LO) ※11月~3月は木曜定休

ホームページ/https://www.takahide-dairyfarm.com/

 

充実した2日間を終えた3人。帰りの電車の中でも会話が弾みます。

「農泊の植村さんは初対面でもとっても温かくて、農泊に対する考えやプライベートなことも話してくれて私は農業がぐっと身近になったよ。なんだかおばあちゃんのお家に来ている感覚(笑)」(江本さん)。

「太巻き作りが親しみやすくて楽しかった。植村さんが以前は小学校の先生ということもあり、食育に対する熱心さも伝わってきたよね」(森部さん)。

「農泊をやられている農家さんは皆パワーがあるけれど、植村さんは向上心もすごいよね。お話しすることでパワーももらえるし。農泊体験は自分自身の心が豊かになると思う。あと、いすみ市は行く前に知ってた鉄道や星空以外にも、おいしい食べ物がたくさんあるし、素敵な人たちがいっぱいいらっしゃって。すごく豊かな経験ができる町なんだと今回、知ることができて良かった」(角田さん)。

「実は観光資源が豊かだよね。上手く情報発信できれば、観光客はぐっと増えそう。海外の人も、東京や大阪の都市ではできないリラックス感が得られると思う」(森部さん)。

「海も山もあって、手軽に自然に触れられるし、いいところだよね。夏は蛍もきれいと植村さんにも聞いたし。またぜひ来たい!」(江本さん)。

 

心地よい疲れを感じながら、笑顔の3人は帰路につきました。

 

千葉県いすみ市の「農泊」について詳しく知りたい方は

いすみ市農泊・インバウンド推進協議会

いすみ市農泊・インバウンド推進協議会