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鳥取で国登録有形文化財に宿泊!唯一無二の農泊体験(後編)

東京オリンピックの開催に伴い、国内外から地方に根付く伝統文化への注目度が高まっています。そんななか、全国の農家や漁村で広まりつつある「農泊」という滞在型旅行をご存知でしょうか?

 

「農泊」とは農山漁村に宿泊しながら、その地の暮らしを体験すること。ただ泊まるだけじゃなく、その土地ならではの伝統に触れ、地元の人々との交流も楽しめるのが魅力です。そこで今回は、鳥取県・八頭郡にある八頭町(やずちょう)で、1泊2日の「農泊」を体験しました。

 

お邪魔したのは国登録有形文化財でもある「太田邸」。こちらで過ごした時間とともに、この町の根付いたモノゴトを2日間にわたって巡ります。後編は、朝のトレッキングからスタート!

※前編はこちら

 

「太田邸」の近くにある「一つ山」で早朝トレッキング

澄んだ空気のもと、長男の隆史さんに案内していただきながらトレッキングをスタート

 

「太田邸」ならではのアクティビティのひとつが、近くにある「一つ山」でのトレッキング。標高は約200(標高差50)メートル、「太田邸」から頂上までは往復約30分という手軽さで、ちょっとしたリフレッシュにもぴったりな体験です。

 

「一つ山」はかつて、戦国時代の鷹山城主・丹比孫之丞(たじひまごのじょう)のお姫様のお屋敷があったとも言われています。そんな歴史や八頭町に伝わる「一つ山のきつね」伝説の話を聞きながら、頂上を目指しました。少々急な坂道からスタートしたからか、あっという間に体がぽかぽかに。

山頂に着いたら、お稲荷さんにお参り。

周りを見渡すと360度、山々や町の景色が広がります

 

頂上に祀(まつ)られているお稲荷さんは、八頭町で語り継がれる「一つ山のきつね」伝説に関係しています。伝説の主は、村のみんなに親しまれていた一つ山の白キツネ・次郎左衛門。1581年ごろからここに住む次郎左衛門は、あるとき上方に旅立ち「一つ山関」を名乗って関取として活躍する…といったお話です。ちなみに鳥取県各地には、それぞれの地域ならではの伝説や昔話が多く残っているんですよ。

 

そんな物語を聞きながら、昨日買った鳥取名物の「白バラ牛乳」をお供にひと息!

こんな休憩スペースもあります。暖かい季節はお弁当を持ってきてもよさそうですね

 

「白バラ牛乳」は県内の酪農家が一体となった農協「大山乳業農業協同組合」による、鳥取の名産。搾乳からパッケージングまでを県内で行うため、人の手に渡るまでの時間が短く、より新鮮な味を届けることが実現しました。全国でもトップクラスの品質と言われており、コクがあって後味はすっきり。体に馴染む、朝の目覚めにぴったりな一本です。広大な田畑と青空を前に、つい深呼吸したくなります

すがすがしい空気を胸いっぱいに味わって、農道を散策しながら帰路につきました。

 

◎一つ山トレッキング

料金/8,000円(ガイド付き)

体験時間/1時間(1名〜参加可能)

※1週間前までに要予約、雨天・荒天時は中止

 

鳥取名物尽くしの朝ごはん

朝食も鳥取名物がずらり!

 

運動したあとは、お待ちかねの朝ごはん! 今朝も奥さまが腕をふるってくださいました。焼き魚やきのこのお味噌汁に加え、昨日手に入れた「ちむら」の「とうふちくわ」や「とうふステーキ」、デザートには自家製の「王秋梨のコンポート」も並びます。う〜ん、贅沢!

野菜から炭水化物、果物まで、バランスの摂れたメニューです

 

食後は、出かける前にもうひと休憩することに。「太田邸」の一角にある「cafe ひとつ山」へ向かいました。

 

旧郵便局舎をリノベーションした「cafeひとつ山」

店名は先ほどの「一つ山のきつね」伝説に出てくる白きつねに由来します

 

「太田邸」の敷地内で松井さんがオープンした「cafe ひとつ山」は、この地域に初めてできた郵便局舎を再利用したカフェ。扉やカウンターをそのままいかした内装から、当時の面影を感じます。

 

地域のアドバイザーとしても活動する松井さんは「ここのカフェを開店したのは、貴重な建物の保存はもちろんですが『八頭町の雇用やもの作りの発展を後押しできたら』という思いがありました」と話します。

かわいらしい手作りのメニュー。

店内には県内木工工場による工芸品なども飾られています。

 

自慢のコーヒー(ホット)は、あっさりブレンドとしっかりブレンドの2種類(各350円)。松井さんおすすめのあっさりブレンドは、ぐっとした苦味が印象的。香ばしい風味があとを引く、すっきりとした飲み口です。

 

そして店内には、奥さまが出版された絵本「一つ山のきつね」も。開いてみると、ほっと温かな文字と色鮮やかな絵で、キツネ伝説が描かれていました。訪れた際は、ぜひ手に取ってみてくださいね。

陽射しが気持ちいい。窓に張られたガラスも昔ながらの素材をそのまま残しており、味があります

 

「八頭町は自然だけじゃなく、さまざまな歴史的建造物や伝統工芸も残る場所なんですよ」と話します。「地元の人たちと話すうちに生まれたアイデアが、形になっていくのも楽しい。地元生まれのものごとがより多くの人の目に触れて、土地の活性に繋がったら嬉しいですね」(松井さん)。

 

◎cafe ひとつ山(太田邸敷地内)

時間/10:00〜15:00

休み/月〜木(臨時休業あり)

 

「太田邸」周辺を散歩

「太田邸」周辺にも見どころがたくさん!

 

「太田邸」を出てすぐの場所には八頭町の農業を支える八東川(はっとうがわ)の支流・細見川が流れます。平成12年にできたこの橋は、山々と家屋、川を一望できる絶好のスポットです。

八頭町にまつわる昔話が書かれた看板も

歴史感じる「太田邸」の外壁は、町のなかでも目を引きますね

 

最後に「太田邸」内を散策!

ラストは「太田邸」をすみずみまで探検!

 

池田藩の絵師が描いた屏風や古い掛け時計などの骨董品と、時代を感じさせる貴重な品々に触れられるのも「太田邸」ならでは。最後にぐるっと見て回りました。

「太田邸」の裏手には、パワースポットである富枝神社

 

神社でパワーチャージしたり、庭で育っている植物に触れるなど、「太田邸」は邸内でのお楽しみもたくさん! 葉書の始まりとされる葉っぱ「多羅葉(たらよう)」など、おもしろい植物も発見しましたよ。

風情がありますね。地主でもある太田家には、昔ながらのそろばんも残されています

 

前編で松井さんが「邸内はほぼ、明治〜昭和のままの状態を保っています」と話されていた通り、五右衛門風呂や現在では珍しい昔のトイレも見学用に残されています。さらに「太田邸」は結婚式で利用されることもあるため、金屏風や縁起物が並ぶ一間も用意されていました。

松井さんご家族ともお別れのとき。最後に自家製の干し柿をいただいて、「太田邸」を後にしました

 

国登録有形文化財でもある「太田邸」。格式ある佇まいながら、温かなおもてなしに癒された1泊2日でした。

 

さて、旅はまだまだ続きます。八頭町やその周辺の食や手仕事を巡りましょう。

 

革工房「Dear Deer」でレザークラフトに挑戦!

革工房「Dear Deer」は、工房を併設した革製品の専門店

 

もともとアパレルに勤めていたというオーナーの石井健治さんは、良質な革を求め、6年前に八頭郡・若桜町へたどり着きました。販売は若桜町でのみ。革製品の製造とともに、トートバッグや名刺入れなどのオーダーメイドも受けています。

 

「鹿の命を大切に活用し、若桜町の特産として人々に触れてもらえたら嬉しいですね。地域の人たちと力をあわせながら、さまざまなアイテムが生まれています」と石井さん。「軽く柔軟性のある鹿革は、長く使ってもその品質や色味が落ちません。より広く知っていただけたらと思うのと同時に、もの作りを通してこの地に還元していきたい」(石井さん)。

工房ではクラフト体験も。

鹿革に刻印を施す「ストラップ作り」(500円)にチャレンジしました

 

柔らかな鹿の革ですが、タンニン鞣(なめ)しを施すことで刻印を可能にしたそう。キーホルダー(800円)やミニガーランド(1,500円)など、作れるアイテムのラインナップも豊富です。素材を湿らせたら刻印棒の位置を決め、かなづちで打つ。「垂直に打つのがコツです」とのことですが、これがなかなか難しい!

 

鹿革の特徴などの話を聞きながら、約1時間かけストラップが完成。さっそくカバンに付けて、次なる場所へ向かいます。

 

◎革工房「Dear Deer」

住所/鳥取県八頭郡若桜町若桜979-1

電話/0858-82-0875

時間/8:30〜19:00

休み/不定休

※体験は予約不要

 

「gallery,cafe,books Fuku」で地元産のジビエランチ

若桜町で捕れたジビエをメインにしたランチプレート(1,000円)

 

2019年7月にオープンした同店は、築85年のうどん店をリノベーションしたギャラリーカフェ。店頭では季節替わりの展示のほか、オーナーがセレクトした雑貨の販売も行なっています。

メニューを待つ間に、ギャラリーを見学。展示されている作品は、購入も可能です

 

ランチプレートは若桜町産の野菜やジビエ一挙に味わえる、ここならではの内容。本日のメインは、噛むほどに旨味があふれる鹿肉の揚げ春巻きでした。

添えられているのはキャベツとしめじのオムレツや、春菊とキウイのサラダなど。その日に入った素材をいかした品々は、どれも食材の個性がいきいきとしていてやみつきになりそうな味わい。

 

◎「gallery,cafe,books Fuku」

住所/鳥取県八頭郡若桜町若桜113

電話/非公開

時間/11:00〜17:00(ランチは〜14:00)

休み/不定休

※ディナーは予約制、店内での撮影は不可

URL/https://fuku-wakasa.com/

 

ライダーの聖地・若桜鉄道「隼駅」に立ち寄り

ランチを楽しんだあとは、若桜駅から鉄道に乗車! 隼駅で下車します

昨日も乗った若桜鉄道ですが、実は駅舎やプラトフォームなど、沿線の計23施設が国の登録有形文化財に指定されているのです。せっかくなので、回りきれなかった場所にちょっとだけ立ち寄りました。

 

下車したのは木造平屋建ての「隼駅」。昭和5年に若桜駅までの全線が開通するまではここが終着駅だったため、本屋や乗務員の休憩所が設けられているのが特徴です。昨今はバイク「ハヤブサ」のライダーが集まる聖地としても知られています。

「隼駅」は併設する本屋にくわえ、プラットフォームが有形文化財として登録されています

 

移動中にこうして町の歴史に触れられるのも、この地域の魅力です。それでは車に乗り換えて、県外の人たちからも話題のとあるスポットへ!

 

「大江ノ郷ヴィレッジ」内「大江ノ郷テラス」でパンケーキタイム

このエリアに来たら欠かせない、絶品パンケーキとは?

 

到着した「大江ノ郷ヴィレッジ」は、隼駅から車で約10分。養鶏農家「大江ノ郷自然牧場」のオーナーが作った同施設には、牧場自慢の卵「天美卵(てんびらん)」をさまざまに味わえる直営のフード店が並びます。ベーカリーからジェラート、出し巻き卵専門店、ハンバーガーショップまで多彩な店舗がずらり! 工房を構える店舗はすべてガラス張りになっているのもこちらの特徴です。

お客さんらとの距離感を縮めるべく、施設内はオープンキッチンをイメージした開放的な造りに

 

「天美卵」は濃厚なコクとすっきりした後味を持つ、平飼いで育った卵。全店で「天美卵」を使ったメニューが食べられますが、なかでも評判なのが「大江ノ郷テラス」の「大江ノ郷パンケーキ」です。

 

「大江ノ郷テラス」は山々の緑を望む、オープンキッチンを構えたビュッフェレストラン。窓が大きく取られた開放的な造りにくわえ、革張りや洒落たファブリックのソファがリゾート感を後押しします。こちらのオーダー方法は、ビュッフェにプラスしてメイン料理やスイーツを頼むスタイル。「天美卵と野菜を楽しむビュッフェ」(大人1210円、休日1430円)では、天美卵と地元野菜による約15品が楽しめます。

隣接するカフェ・ココガーデンで誕生した「大江ノ郷パンケーキ」(1枚440円、2枚770円)がお目見え! 20分かけじっくりと焼いた一皿です

 

「10分以内にお召し上がりください!」とサーブされたパンケーキは、ふかっと濃厚。このふわふわ感の要は、注文後にたてるメレンゲ。口いっぱいに広がる卵のおいしさと、ふんわりと溶けるやさしい食感に顔がほころんでしまいました。

 

帰る前には、隣接の「ココガーデン」で買い物も忘れずに。カフェとスイーツショップが一体になった同店には、天美卵を使ったプリンやバウムクーヘン、焼き菓子などが並びます。もちろん、卵も買うことができますよ!

 

◎大江ノ郷テラス

住所/鳥取県八頭郡八頭町橋本877

電話/0570-077-505

時間/10:00〜15:00

休み/不定休

URL/https://www.oenosato.com/terrasse/

 

小学校をリノベーションしたホテル「OOE VALLEY STAY」へ

小学校をリノベーションした「OOE VALLEY STAY」も見学

 

1階の炉端焼きレストラン「ダイニングレストランIRORI」

「八頭町に近ごろ話題となっているホテルがある」と聞いて、急遽向かった「OOE VALLEY STAY」。こちらは「大江ノ郷テラス」から車で5分ほどの位置にある、小学校を改装したリゾートホテルです。1階の炉端焼きレストラン「ダイニングレストランIRORI」のほか、客室も見学します。レストランは地元で穫れた野菜や川魚の料理をはじめ、地酒や鳥取県内で造られるワインなど、お酒のラインナップもいろいろ。宿泊者以外の方も利用できますよ(要予約)!

お邪魔したのは天井が高くとられた3階の「デラックスルーム」

ふっかふかのSIMMONS社製のベッドなど、設備にも注目してください

 

見せていただいた客室は、もと放送室。中二階に設けられたバスルームなどからその名残りが感じられます。ほか、スタンダードルームやカジュアルに泊まれるドミトリールームなど、ニーズに合わせて選べる多彩なお部屋がそろっていました。

 

満天の空や山々の小鳥の声を楽しむべく、テレビがないのも同ホテルのこだわり。ですが、ダイソンヘアドライヤーやバルミューダのケトル、ハンディなど最新式のアメニティをそろえ、冷蔵庫に入っている地酒は無料と、至れり尽くせりのお宿でした。

 

◎OOE VALLEY STAY

住所/鳥取県八頭郡八頭町下野331

電話/0570-008-558

料金/デラックスルーム1人15,710~32,000(税別)(全室朝食付き)

URL/https://ooevalley.jp/

 

雨の日も嬉しい! 隣接のアリーナでスポーツ三昧

宿泊者以外も利用できるアリーナも!

 

ちなみに「OOE VALLEY STAY」から渡り廊下でつながっているアリーナでは、ボルダリングやトランポリン、バドミントンや卓球など、幅広い世代が遊べる設備が勢ぞろい。雨などで予定がキャンセルになった際にも嬉しいですね!

 

◎アリーナ

時間/一般10:00〜15:00、宿泊者15:00〜23:00、7:00〜10:00(受付は当日、ホテルレセプションにて)

 

料金/一般:中学生以上1200円、小学生600円、宿泊者:中学生以上800円、小学生400円(各税抜き、未就学児無料)※小学生以下は、保護者の同伴が必要

 

旅の終わりは鳥取県屈指の観光名所・鳥取砂丘へ

海と陸をつなぐ「鳥取砂丘」は日本最大級の海岸砂丘でもあり、国の天然記念物にも指定されています

東西約16キロ、南北約12キロにわたる「鳥取砂丘」は、数万年かけて海と風により作られました。独特の地形や時間によって変化する景観は、まさに自然が織りなす芸術。ダイナミックな景色に息をのみました。

昼間にはサンドボードやパラグライダー、砂丘YOGA®など、ここならではのアクティビティもありますよ!

 

◎鳥取砂丘

電話/0857-39-2111(公益社団法人 鳥取県観光連盟)0857-22-0021(山陰海岸国立公園 鳥取砂丘ビジターセンター)

時間/24時間(ビジターセンターは9:00-17:00 年中無休)

URL/https://www.tottori-guide.jp/sakyu/

 

新旧が同居しながら輝きを増す町・八頭町

 

歴史的建造物や伝統がさまざまに息づく八頭町。地域のみなさんの手によって、形を変えたり進歩した技術を込めながら、先人が残した歴史が守られていました。こうしたさまざまなことを五感で学ぶことができるのは「農泊」という旅の形だからこそ。気になる土地を訪れる際に「農泊」を選んでみたら、その時間はいっそう豊かなものになるのではないでしょうか。

 

鳥取県八頭郡の「農泊」について詳しく知りたい方は

若桜谷活性化協議会

https://nohaku.net/council/council-1062/