岐阜で名物グルメと城下町の歴史を巡る、2日間の農泊旅(後編)
近ごろ、全国の農家や漁村で広まりつつある「農泊」という滞在型旅行をご存知でしょうか?「農泊」とは農山漁村に泊まりながら、その土地の暮らしを体験する旅のスタイルのこと。宿泊するだけじゃなく、その土地の伝統に触れ、地元の人々との交流も楽しめるのが魅力です。
今回はそんな「農泊」の楽しみを届けるべく、岐阜県・郡上市へ1泊2日の「農泊」へ出かけました。後半は郡上八幡の街に向かいます。
※前編はこちら
「水とおどりの町」、郡上八幡!「Takara Gallery workroom」でマイ手ぬぐい作り
まずは郡上市発祥と言われる、「シルクスクリーン印刷」で作る、手ぬぐいプリント体験のお店「タカラギャラリーワークルーム 」にお邪魔しました
「タカラギャラリーワークルーム」で体験できる「シルクスクリーン印刷」は、郡上市が発祥といわれるプリント技術です。郡上のシルクスクリーン印刷工場がご実家のご主人と嫁いできた奥様で運営されており、奥様は結婚を機に起業、手ぬぐいが必須アイテムである「郡上おどり」にちなみ、2012年に手ぬぐいプリント体験のお店を開店しました。
体験では季節限定ものを含む、30以上の柄の組み合わせを選べます。ベーシックな1柄で1000円〜、一つ柄を増やすごとに、プラス500円です。広範囲入る柄のほか、ワンポイントでひらがな(1文字につき200円)などを入れることも可能で、だいたい3〜4柄を組み合わせる人が多いそうですよ!
柄はすべて、学生時代にデザインを学んだ奥さまとご主人が描かれているそう!
ベースの手ぬぐいは長さ90cmと100cmから選べます。全6色です。
手ぬぐいは5種の綿100%にくわえ、岐阜県山県市で作られている柿渋という生地(プラス500円)の6種があります。私は定番の白を選びました!
「シルクスクリーン印刷は版画のようにインクを刷り込んでいく技法で、洗濯もできますし、温泉などでも使えます。お友達や家族と作って、旅の思い出にされる方も多いですね。」と店長さん。
型の上にインクを乗せ、ゆっくり刷り込んでいきます。
コツはナナメ45度にかたむけて、ほどよく力を入れること!
柄を選んだら、20色以上あるインクから色を選びます。なかなか完成図が想像できず、組み合わせに苦戦! 店長さんに相談すると「まず1柄実際にプリントしてみて、それを見てから次の柄を考えたりすると難しくないですよ。色もメインで使うものを決めてから差し色を選ぶのがおすすめ」とアドバイスいただきました。
悩んだ結果、郡上八幡に実在する名所や建物が描かれた柄&幾何学模様を組み合わせることに。さらにここから徒歩約7分ほどの「旅館 中嶋屋」の看板猫・ベカちゃんの柄をポイントで!
オリジナル手ぬぐいが完成!どうですか?かわいくて使うのがもったいない!
「郡上八幡で毎年7〜9月上旬に行なわれている郡上おどりでは、みなさん手ぬぐいを身につけて踊るんです。地場産業であるスクリーン印刷で作った手ぬぐいを持って、郡上おどりの時期にまた遊びに来てもらえたら」(店長さん)。
Takara Gallery workroom / タカラギャラリーワークルーム
住所/岐阜県郡上市八幡町島谷470-28
電話/0575-67-9707
時間/10:00〜17:00
休み/火・水
URL/http://www.takara-garo.com/
※手ぬぐい体験は予約制です
町の名物猫・ベカちゃんに会うべく「旅館 中嶋屋」へ
創業144年になる「旅館 中嶋屋」へ。ベカちゃん、はじめまして!
先ほど手ぬぐいの絵柄として登場したベカちゃんは、ここ「旅館 中嶋屋」の壁のなかから発見された看板猫。
旅館のアイドルとして活躍中のベカちゃん。
手ぬぐいの絵柄では、ベカちゃんの背中の模様まで忠実に再現されています
女将さんが大好きなベカちゃん。ほんの10分でしたが、いろんな表情を見せてくれました。
旅館 中嶋屋
住所/岐阜県郡上市八幡町新町940
電話/0575-65-2191
URL/http://www.nakashimaya.net/html/
おどり体験
せっかく手ぬぐいを作ったので、「郡上おどり」を習います
「郡上おどり」を習うべく向かったのは「郡上八幡旧庁舎記念館」。町のほぼ中央に位置する同施設は、観光案内所のほか軽食コーナーや食堂も入居する、郡上八幡の観光拠点。昭和11年にできた洋風の木造建築も、見ごたえがあります。国の登録文化財にも指定されている、歴史ある場所なんですよ。
ちなみに外には2つのコインロッカーが設置されているので、お土産や荷物を入れておくこともできます。チェックアウト後でも身軽に観光に出られるのは嬉しいですね!
ちょっと早く着いたので、お土産コーナーもチェック
「郡上おどり」は、国の重要無形民族文化財にも指定されている、歴史ある踊り。“見るおどり”ではなく“踊るおどり”とも称され、全10種の曲目があります。
毎年7〜9月上旬の30数夜にわたって行なわれる「郡上おどり」。日本一ロングランな盆踊りとも言われており、道路や広場に屋台を移動させながら、その周りを輪になって踊るそう。さらに旧盆の8月13〜16日の4日間は、20時から明け方の4時まで踊りが続く「徹夜踊り」も! 数万人の踊り子が夜通し踊る様子は、この町の名物なのです。
2階にある大会議室「かわさきホール」でレッスン開始!
教えてくださるのは郡上おどり保存会員の方。つまり郡上おどりのエキスパートです
教わったのは、代表曲の「かわさき」。川の流れや山など、町の情景を表現した振り付けを、歩きながら踊ります。繰り返し踊るうちに、だんだんさまになってきました!
「上手にできましたね」と太鼓判をいただき、体験は終了。記念に「おどり修了証」をいただきましたよ!
郡上八幡旧庁舎記念館
住所/岐阜県郡上市八幡町島谷520-1
電話/0575-67-1819
時間/8:30〜17:00(テナントにより異なる)
休み/12/29〜1/3
URL/http://kinenkan.gujohachiman.com/
郡上おどり体験教室
問い合せ/0575-67-1819
料金/貸し切りプラン1人税込550円(20名から予約可、定員50名まで)〜
※7日前に要予約
URL/http://gujo-odori-lesson.gujohachiman.com/
歴史が息づく城下町を散策
城下町としても栄えた郡上八幡。最後はガイドさんと共に、町中をぐるっと巡ります
集合場所は踊りを習った「郡上八幡旧庁舎記念館」。出発し、郡上八幡樂藝館〜橋本町&新町を散策〜郡上市名物のサンプル工房を経て、吉野川にかかる宮ヶ瀬橋を渡り北側へ。名水・宗祇水(そうぎすい)〜職人の町・鍛冶屋町を散策〜ニッキ飴の老舗・桜間見屋というルートで歩きました。
元病院である「郡上八幡樂藝館」は1904年にできたこの地方初の総合病院。建築時の姿が残る本館と看護婦棟、レントゲン棟は国の登録文化財でもあります。
「郡上八幡樂藝館」には、岐阜初のレントゲン棟も備わっていたんです!
町中の各所には、風情ある建物も
話は変わりますが、日本の大半の食品サンプルは郡上八幡で作られているのをご存知でしたか? そのため、町中には食品サンプルの専門店が多数あるのです。
「さんぷる工房」では、ストラップやキーホルダーなどのグッズを買えるほか、展示や体験コーナーも構えます。どれもリアルで驚き!
郡上八幡ではところどころに町屋が見られますが、食品サンプル専門店「さんぷる工房」もその一つ。築約150年の建物です
お次は吉野川にかかる橋を渡って、北側にある商人・豪商の町、本町通りへ。郡上八幡は大正8年の大火で北町(吉田川の北側)が燃えたため、江戸時代の建物が残るのは南町のみ。たどり着いた北町では、大火後に立てられた、郡上八幡ならではの町並みが見られます。
昭和60年、日本の名水100選の第一号に選ばれた「宗祇水」にもぜひ立ち寄りを
大火でほぼ全焼した北町では、ほとんどの建物に「そで壁」と言われる防火壁や、屋根には雪を止める雪止めがほどこされています。
また、各家の軒下にバケツが吊るされているのも、郡上八幡の特徴です。いざというときにすぐ水路から水が汲めるよう、大火を経験した先人の知恵がいまもなお、継がれているんですね。
家の前の用水路には、水をせき止める「せき板」が入れられる溝が(この板も、各家に一つあるそうです)
このせき板、元は防火対策と火災がおきたらすぐ水を汲めるよう作られたものですが、野菜を洗ったり、打ち水などの生活用水の一部として使われていた時代もあったそう。
本町通り〜古い建物が残る鍛冶屋町の途中には、「郡上おどり」の像や郡上八幡城が見えるスポットも。歩くこと約90分、最後はニッキ飴の専門店「桜間見屋(おうまみや)」に。明治20年に郡上八幡で創業し、いまもなおほぼ手作業で昔ながらの製法を守っている老舗です。
ニッキ飴と言っても、種類がたくさん!店内では試食もできますよ
観光案内人によるガイド
電話/0575-67-1819
料金/1回ガイド1人につき税込2750円(90分)
※1週間前までに要予約
食に歴史巡りと、充実した1泊2日の旅。でも何よりも、お母さんに教わった郷土料理の味が忘れられません。
限られた地域に伝わるこうした文化を体験できるのも、「農泊」ならでは。そんなことを改めて感じた2日でした。
岐阜県郡上市の「農泊」について詳しく知りたい方は
「ぎふの田舎へいこう!」推進協議会
https://gifu-inaka.pref.gifu.lg.jp/index.html