山村の滋味とおもてなし。京都・美山の「農泊」旅(後編)
京都府・美山町/畑で収穫を体験し、かやぶきの里へ
日本各地の農山漁村に滞在する「農泊」。古都・京都にも、自然あふれる、農泊にぴったりな地域があります。農村カメラガールズの3人が訪れたのは、南丹市の中の美山町エリア。京都府のほぼ中央にあり、緑あふれ、かやぶき屋根の民家が多く残る、まさに日本の農山村の原風景が息づく町です。
「山里料理 民宿 ハリマ家」での翌朝、ご主人の勝山賢一さんの父の武司さんの案内で、畑を見せていただくことに。サルが来ないよう、藤などのつるで覆った柵に囲んだ、こぢんまりとした畑では、宿で提供する料理の野菜のほとんどを栽培しているのだそう。「ここの畑が冷蔵庫替わりみたいなもんなんです」と武司さんは笑いながら言います。
本来、今の時期は雪に覆われているという畑には、大根やからし菜などが育っており、農村カメラガールズの3人は収穫にもチャレンジ。「大根は雪が積もることで、より長持ちし、甘みも辛味もぐっと増すんですよ」という武司さんの説明や、抜いたばかりのからし菜を味わい、ピリッとした辛味に驚くなど、農作業の体験に没頭。家の脇の石垣で栽培するシイタケも収穫させてもらいました。
「野菜に愛情があるおじいさんの人柄が素敵。説明を聞いて理解が深まりました」(朴さん)、「実際に食べているものがこれなんだと、目の当たりにできて良かったです。地方ならではの体験ですよね、」(保坂さん)と、感想を話します。
宿に戻った後は朝食。収穫したばかりの大根はサラダに、シイタケは味噌汁に。なかでも、普通は農薬がついているため食べることができない大根の葉は、こちらではもちろん無農薬なので、じゃこと炒めたふりかけに。都会ではなかなか食べられないおいしさに食が進みます。しっかり朝ごはんをいただき、勝山さんご一家の温かなおもてなしを受けた3人は元気をチャージし、宿を後にしました。
山里料理 民宿 ハリマ家
住所/京都府南丹市美山町佐々里
電話/0771-77-0720
料金/1泊2食付・中学生以上9900円~(税込)
ホームページ/http://www.harimaya.net/
2日目の午前中は、昨夜も訪れた「美山 かやぶきの里」をカメラ片手に散策。「かやぶき屋根をこんなに近くで見るのは初めてです」と朴さん。
岐阜の白川郷をはじめ他の地域にもかやぶき屋根の集落はありますが、ここ美山がユニークなのは、通常の住居として使用している人が多いこと。店舗は2つのカフェと美山民俗資料館、2軒の民宿だけです。
その美山民俗資料館は、主屋、納屋、倉の3棟からなり、約200年前の建築を再現。柱や梁の位置などは江戸時代の様式そのままです。囲炉裏や縁側などがある屋内を見て回り、展示されている生活具なども見学できます。
カメラガールズの3人は見学の傍ら、お手玉遊びも楽しんでいました。
美山 かやぶきの里
住所/京都府南丹市美山町北
ホームページ/http://www.kayabukinosato.com/
美山民俗資料館
住所/京都府南丹市美山町北中牧15
電話/0771-77-0587
営業/4月~11月9:00~17:00、12月~3月10:00~16:00 ※12月~3月は月曜休館
料金/大人300円、小・中学生無料
ホームページ/http://www.kayabukinosato.com/siryokan.html
散策をした後は、「カフェギャラリー 彩花」で一休み。3人が味わった「きび工房のお団子セット」(税込550円)、「彩花オリジナル大福セット」(税込550円)、「あっさりチーズケーキ」(税込430円)など、ほぼすべてのスイーツに美山牛乳や美山の平飼いの卵など地元の食材が使われているのも魅力です。
カフェギャラリー 彩花
住所/京都府南丹市美山町北下牧15番地(かやぶき交流館内)
電話/0771-77-9038
営業/11:00~17:00 ※不定休。イベント時~20:00
ホームページ/http://www.kayabukinosato.com/koryukan.html
京都府・美山町/ヘルシーランチと達人のわら細工体験
「美山 かやぶきの里」近くの由良川の河原の散歩や撮影を楽しんだ3人は、ランチをいただきに、「美山おもしろ農民倶楽部」へ。代表の外田洋一さんが作り出す、無添加のハムやソーセージの上質な味わいを求める人でいつも賑わうお店です。販売スペースの傍らにカフェも併設されており、こちらではそのハムやソーセージを使ったメニューを味わうことができます。
昨日伺った田歌舎から仕入れる鹿肉の鹿ソーセージや京野菜を使ったソーセージなどを盛り合わせた「ソーセージ盛り合わせ7種盛り」(税込1640円)や、自家製玉子と無農薬のゆずを使った「ゆずシフォンケーキセット」(税込740円)など、生産者の顔が見える食材で、すべて無添加にこだわった料理が満喫できます。なかでも12月から4月前半までの限定メニューの「ポトフセット」(税込1100円)は、薪ストーブで外田さんのお兄さんが手がける自家飼育の鶏のガラを煮込んだスープに、京壬生菜のソーセージや美山の野菜などを合わせた逸品。「味付けがすごく優しくて癒されます」(大園さん)。
美山おもしろ農民倶楽部
住所/京都府南丹市美山町内久保池ノ谷33-1
電話/0771-77-0884
営業/11:00~日暮れまで ※火曜定休
ホームページ/http://www.miyamahamu.com/
食事を終えた後は、自動車で10分ほどの「道の駅 美山ふれあい広場」へ。構内には美山の観光案内所である「京都丹波高原国定公園ビジターセンター」と、道の駅の店舗「ふらっと美山」などがあり、ここでは地域の特産品も販売。美山牛乳の直売所ではソフトクリームやジェラートも楽しめます。地元グルメを横目に、3人はビジターセンターの2階へ。ここで美山に伝わる、わら細工を体験します。
指南役は岡本勝さん。岡本さんは、鳥居で有名な京都の伏見稲荷大社のしめ縄を手掛けるなど、日本でも有数のわら細工の達人。「お、べっぴんさんが来よった」と、にこやかな表情で3人を迎えてくれました。
「とりあえず私の年を当ててくれはりますやろか? この間、学生さんが68やと言ってきたんですけど、むちゃくちゃやで(笑)」と、軽妙なトークから始まった、岡本さんのわら細工講座。一同が笑っていると、「あと5か月で92や」と驚きの回答。「まずはこれからやな」と、瞬く間に2本のわらで縄をより始めた岡本さん。スピーディーな技に、3人とも「すごい!」と驚きが続きます。
わらを両手に持ち、それぞれ親指と人差し指でつまみ、その手を上下に重ね合わせ、手のひらの上で回すようにわらをより合わせていく、という基本のレクチャーを受けた3人。最も上達が速かった保坂さんはわら細工のガイド本を見ながら、「亀作りたい!」と言い出し、岡本さんを逆に驚かせていました。
最終的に岡本さんの大きな助けも借りながら、おみやげにわら細工の亀やミニしめ縄などをいただいた3人。「めちゃめちゃ良かった!日本の神社に飾ってあるしめ縄はどうやって作るんだろうって疑問に思っていたんです」(朴さん)、「岡本さんのお話がまた面白くて興味深かった。昔と今の暮らしの違いも考えさせられた貴重な体験です」(保坂さん)、「岡本さんは本当にお元気で楽しくて、あのご年齢でタブレットを使いこなしているのもすごい(笑)」(大園さん)。
今回の多彩な体験などをガイドいただいた、南丹市美山観光まちづくり協会の高御堂和華さんにもお話を聞きました。「京都は市内で宿泊しようとすると、シングルやツインがほとんどで、ファミリーや大勢での女子旅だとお部屋を探すのが大変。その点、美山はグループでいらっしゃる場合は良い民宿も多いですし、一棟貸しもあります。皆さんでゆっくり過ごされるのにぴったりです。あとは体験やアクティビティの豊富さと、豊富な食材によるおいしい料理、価格もリーズナブルな点も自慢ですよ」。
一般社団法人南丹市美山観光まちづくり協会
住所/京都府南丹市美山町安掛下23
道の駅 美山ふれあい広場内
電話/0771-75-9030(水曜定休)
営業/9:00~17:00
ホームページ/https://kyotomiyama.jp/
美山 わら細工体験
電話/0771-77-0014
料金/5人まで22000円、6人以上1人3300円
ホームページ/https://kyotomiyama.jp/activity/warazaiku
美山の魅力を存分に味わった農村カメラガールズの3人。今回の旅の感想をこう話します。
「私の地元の田舎とは違って(笑)、美山はごはんがおいしいのはもちろん、かやぶきの里や雪灯廊のイベントなど見どころがたくさん。農業やわら細工などの体験も充実していて驚きました。」(朴さん)。
「目の前でとった野菜をすぐ食べるなど、地産地消を実感できるのが一番いいなと思いました。都会じゃ絶対できません」(保坂さん)。
「すごくのどかですよね。時間の流れが都心とは違う。こんにゃくを作る、ご飯を炊く、ゆっくり時間を感じることで日ごろの疲れが癒されました。鹿や猪などのジビエを食べて、その猟を知ると、毎日の食事に感謝したくなります。あと景色がすごくよかった」(大園さん)。
「星空もめっちゃきれいでしたね!」(朴さん)。
「カメラガールズとしては機材もしっかり準備して、また来たいですね」(保坂さん)。
楽しい思い出と、次なる旅への予感を胸に、3人は帰路につきました。
京都府南丹市美山の「農泊」について詳しく知りたい方は
南丹市美山エコツーリズム推進協議会